4:本の捨て子

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「……本の捨て子は、元の持ち主の処へ帰っていった、か」  ゆっくりとせあらの方へ顔を向ける。 「”せあら”は、母親が可愛がっていた猫の名前だったな、」  せあらは自分の心臓の(ふる)えを聞いた。  その猫の名前を、父親は自分の息子に名附けた。きっと、何でも良かった。  この世界に生まれ落ちた瞬間に、自分は捨てられていた。今、此処に自分がいるのは、拾ってくれたひとがいるからだ。 「あの本の続き……だがな、」 「は、」  はい、と、せあらは頷く。書き上がったのだろうか。だが(ジン)の表情は渋い。 「どうにも上手く書けないんだ」  ああ、だからこのところ彼は悩んで、(いら)立っていたのか。せあらは合点する。 「どうすればせあらの気に入るような続きが書けるのか、判らなくてな」  神は重苦しげな溜息を吐く。
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