1:ケーキ! ケーキ! ケーキ!

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 ゆっくりと、女性が頭を持ち上げた。 「あっ、あなた大丈夫?」  晶良さんが顔を覗き込む。若い女性だった。皮膚に砂粒がくっついている。 「ど……して……」 「え?」  女性の発した呻きに、晶良さんが目を瞬かせる。 「どうして隣りが洋菓子店なんですかあっ。酷すぎるううう!」  そう云うと、女性は子供のように泣き出して、アスファルトを拳で叩いた。その烈しさに、せあら達は一瞬、呆気に取られる。通りがかりの人たちが、何事かと、こちらに注目する。 「あの、大丈夫? 一体どうしたの?」  晶良さんがハンカチを差し出して訊ねる。 「とりあえず、地面を叩くの止めよう。ね。手が痛くなっちゃうよ」  やさしく諭すように晶良さんが云うと、女性は拳を叩きつけるのを止め、ハンカチを受け取った。素直に(なみだ)を拭う。せあら達はほっとした。 「……このハンカチ、ケーキの匂いがします……」  女性はハンカチを鼻に押し当て、匂いを嗅ぐようにした。
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