141人が本棚に入れています
本棚に追加
「うち、ケーキ屋だから」
晶良さんが答えると、女性はまた、わっと泪をあふれさせた。「あんまりすぎるううううう」
「わあ、ごめんなさい、気分が悪くなっちゃった?」
晶良さんがおろおろとする。女性はかぶりを振り、しかしハンカチは鼻に押し当てたままだ。四人は顔を見合わせた。
「救急車、呼んだ方が良いのかな?」
鉄太さんが晶良さんに小声で訊ねる。晶良さんは判らないと云う風に、頸を横に振った。
女性は頸を巡らせた。せあらと目が合った。
「お願いします。私をそこの図書館へ引きずっていって下さい」
「ひ、」
引きずる?
せあらは困惑する。
「このまま、ずるずると、引きずっていって下さい。そうじゃないと、私は、私の躰は、」
女性は肩をふるわせる。やはり躰に異変があるのだろうか。
「洋菓子店の前を離れたくなくて、いつまでも図書館にたどりつきません!」
図書館は、あと三歩の距離である。せあら達は揃って口を開けたまま固まった。
最初のコメントを投稿しよう!