1:ケーキ! ケーキ! ケーキ!

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 女性の名前は、唯衣子(ゆいこ)と云った。 「ケーキ、好きなのかい、」  鉄太さんが穏やかに訊ねる。(ジン)が仏頂面で腕組みをしている所為(せい)か、唯衣子は萎縮している様子だった。 「良かったら、うちのケーキ食べるかい。ご馳走するよ」 「だ、駄目です!」  唯衣子はまた大声を出す。神が煩さそうに眉をひそめる。どうも声量の調節が苦手な人のようだ。  ごめんなさい、と、唯衣子は身を小さくして謝った。 「遠慮することないよ。倒れていたのは、もしかしたらお腹が空いていた所為(せい)もあるんじゃない? 違うかな、」  晶良さんの質問に、唯衣子は赤くなって俯いた。 「ね、そしたらみんなで食べようよ。自慢じゃないけど、うちのケーキはすっごく美味しいんだから」 「駄目です……。ケーキは、食べないんです」  消え入りそうな声で、唯衣子は答える。晶良さんは頸を傾げた。 「どうして? ケーキ、好きなんでしょ?」  唯衣子は眉間に力を込めるように、皺をぐっと寄せた。
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