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「ねえ、莉菜(リナ)先輩、私達って恋人ですよねえ?」
こんなことを急に言い出す私の後輩、前田雨白(マエダウシロ)は少しバカだ。
彼女は部室の机に腰掛けて足をフラフラさせながらむくれている。
その爪先からカカトの折れた上履きがスルリと抜けた。
「うん、そうだね。でも雨白ちゃん、そういうことを学校で……いや、何処でも言っちゃ駄目だよ」
転がった上履きを拾い上げて、彼女に貸したままロクに読み進められてもいない私オススメの本の上に置いてやり、少し肌寒くなってきたので部室の窓を閉める。
今は2人きりの部室でも、普段は人がいるのだ。
そうして、この文芸部の部室は1階だから、窓の外に誰かが通ることもあるのだ。
普通じゃないことは、知られるとロクなことがない。
「隠す必要、無いじゃないですか。 今どき、変なことでもないですよ。こういうの」
「あるの、あるんだよ。いつかきっとね、隠してて良かったって思う日が来るの」
女性が女性に恋をするということ。
私は彼女を愛しているけれど、それをどうしても信じ切ることが出来ない。
「何もしてくれないのもいつか良かったって思う日が来るからですか?」
「いつも手、繋いでるじゃない?今もほら」
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