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寒そうに手をこすり合わせていた彼女の手を軽く撫でる。
それからすぐにカーテンを閉め、部屋の鍵がかかっていることを確認してから、私は彼女の手を引きそっと抱きしめる。
「言いたいことは分かるけどさ、したいことはあるけどさ。それを私が取っちゃったら、駄目だと思うの」
抱きしめた私の腕を雨白は少し強めに握る。
「でも、好きだから。私は先輩と何だってしたいんです」
「いつかね、雨白ちゃんに好きな人が出来てさ、キスをして、それ以上のことも、する時に、綺麗なままの雨白ちゃんでいて欲しいんだよ」
「それが先輩とじゃ、駄目なんですか?」
「わかんない、私、雨白ちゃんのことは好きだけど、雨白ちゃんのことしか好きになったことないから、わかんないんだ」
女性が女性に恋をするということ。
私は彼女を愛しているけれど、私は彼女しか愛したことが無い。
私はこの子に出会って初めて恋を知ったのだ。
その丸い瞳に吸い込まれた。
その長い髪を指で梳かしたかった。
その指に手を添えたかった。
その頬に口づけをしたかった。
けれどそのどれが、許されない事のような気がして、いつも怖かった。
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