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後編:貴方のことしか見えない
「でも、いいですよ。私きっと、もう先輩以外に恋なんてしませんもん」
雨白が私に体を預けて前のめりに倒れてくる。
「私は昔、好きな男の子もいましたよ、何人か。そういうことはしたことないですけど」
私の方が彼女よりも2つ年上だけれど、本当は彼女の方がずっと大人なのだ。
彼女がバカな素振りをして見せる度に、私は先輩ぶるけれど、そんな関係が好きなだけで本当の私はすごく臆病で、弱い。
「私はね、もう先輩だけでいいんです。先輩は私の初めてが大事だって言うけれど、それくらい私に選ばせてください」
グッと力を込めて、壁際に詰め寄られる。
「私はワガママだから、先輩の初めてが欲しいんです。先輩はいつか後悔しますか?」
私は後悔なんてしない、きっとしない。
けれどどうしても分からないし、怖かったのだ。
初めてのことは、いつだって怖いし、分からない。
恋とは男と女がするもので、初めてのキスは大事なもので、それ以上はもっと大事なもので。
そんな初めてを彼女から奪うことは、罪では無いのだろうか。
たじろいでいると、彼女の顔が近づいてくる。
「ねえ、本当に? 本当にいいの? 本当に、私でいいの?」
「へへ、逆転ですね。私の勝ちです」
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