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ただわたしたちと決定的に違うのは、妖しい魔力を湛えて淡い紫に染まった長い髪。
そして愉快そうに細められた、ぞっとするほど赤い瞳。
彼女は自らを〝カーラ〟と呼んだ。
わたしはそのカーラの宝物を奪おうとした。だからこれはその罰なのだと彼女は言った。
そのカーラの目の前で、ボロボロになったわたしは何もない地面に身を横たえている。
頭がぼんやりとして、うまく思考が働かない。
ただ、体のあちこちから自分の命が流れ出しているのを感じて、早くここから逃げなければと思った。
これ以上血を流したら、たぶんわたしは死んでしまう。
「今日から少しずつ、お前は記憶が融けていく。一度融けた記憶は呪いを解かない限り戻らない。あまりのんびりしていると、自分の名前さえ思い出せなくなって、最後は真っ白になってしまうよ。そうしたら、お前はもう生きてはいられないねえ」
「……」
「どうやったら呪いは解けるのかって? しようがない。特別に教えてやるよ。私はね、この国にいるチャイディという名の王子が憎くて仕方がないんだ。その王子をこの短剣で刺し殺すことができたら、お前の呪いを解いてやってもいい」
カーラはそう言って、倒れたわたしの鼻先に一振りの短剣を放り投げた。
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