レンタル奴隷

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こいつが来てから、僕の中の野蛮な血が騒ぎ出した。人を殴ったことは初めてだったけれど、今まで知らなかったことを後悔するほどの快感だ。何より痛みに歪み、涙をにじませた顔に流れ出る血を見るともっと、もっとやりたくなる。 親に捨てられたのか?汚ねぇ、ゴミくせぇ、捨てられて当然だ。なんで息吸ってんだよ。言葉を投げかけるたびに唇を血が滲むほど噛むから、楽しいなんてものじゃない。初めていじめっ子の気分がわかった。これは、癖になる。堪らない。 ーー ガッシャァアン!!と、まるで漫画のような音が鳴った。そして音の先には、まるでアクション映画、いや、ゲームのワンシーンのようにバキバキに割れた我が家自慢のリビングのガラス製の大窓がある。 音を聞きつけて自室から慌てて駆け付けたパパに無邪気な笑いを返す僕。パパの引き攣った笑みに顔を合わせているママ。なんだよ、大窓くらい一日あれば治るだろ。 ムスッとした息子の顔色を見たママは洗い物を終えた手を布巾で拭い、”ご飯行きましょう”と僕を手招きした。「うん!」と元気に返した僕に、パパの顔はやっぱり晴れない。ずっと、割れた大窓の下の方を見ている。それを遮るようにパパの目線の先に割り込み、メタボリックな腹を押して外出の準備を急かした。     
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