レンタル奴隷

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腹が膨れた。そして、物欲も満たされた。ディナーのステーキの味はイマイチだったけど、帰りに寄ったホビーショップで念願のエアガンを手に入れた。本体価格にして3万円くらいだが打ちごたえは確かで、まるで本物の銃を扱っている様だとネットのレビューは星五つが付くほどだ。 やけにリビングの扉が重い。力一杯押してやっとこさ開いた扉は、僕、ママ、パパが入り終わると勢いよく閉まった。そういえば、そうだった。 目の前に広がる穴の空いた大窓。そこから入る夜風が扉を押し付けていたのだ。スン、と鼻を鳴らしたパパの真似をして、鼻を鳴らした。不快な臭いが風に乗って、僕らの元にまで届いたから。 「生臭っ」 ステーキを食べてきた手前、それを腐らせたような臭いに吐き気を催しそうになる。 ドスドスと音を立てながら、臭いの元に歩み寄る。目の前には、ゾンビがいた。ゾンビは床に散らばったガラスの破片を、拾っては袋に入れ、拾っては袋に入れ、拾っては袋に入れている。 薄汚れた白いシャツに突き刺さっているガラスの破片。丸った背中から飛び出ているようにも見えるそれは、まるで人間が開発した化物、クリーチャーの様だ。背中の布は赤に染まり、床に血だまりを作っている。 ゴクリ、と喉が鳴り、手にしているエアガンのトリガーに指を掛けた。狙うは目の前の標的、僕の家に侵入してきたクリーチャーだ。僕が、パパとママをこの化け物から助けなきゃ。     
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