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勢いよく僕を見上げたパパは、キッチンで朝食の準備をしているママと顔を合わせた。どうやら、僕のクリーチャーが死んだことを察したようだ。リビングの端の棚から例のチラシを手に、何やら急いでスマホを操作している。
ママを手招きして、懐中電灯を片手に再び地下へと戻る。暗い室内に灯る一筋の霞んだ光の先に、転がっている。ママは、あまりの臭いに口を塞ぎ、階段を駆け上がった。生肉の、傷んだような臭い。地下が寒いくらいに涼しいのが幸いでそれほどキツくはない、けど、吐き気を催すほどには強烈だ。
光で照らした顔。薄く開いた口の端からは唾液が垂れた跡があって、唇はまるで、水辺の石のような色をしている。気味の悪い程に白い肌は、地面と触れている方に行くにつれて紫色に変色している。半分閉じられた目は少し窪んで、水気のない瞳は光を通していない。
まるで、刑事ドラマの鑑識になった気分だ。初めて見る死体に興奮が隠せない。二の腕を掴み持ち上げれば、血の通っていない人間の肉の重みを感じた。冷凍庫から出したての氷のような冷たさに直ぐに手を離し、死体が纏っている布で拭う。
地下からリビングへと通じる扉を開けると、すぐ目の前にパパが立っていた。その隣に、ママも。
「どうしたの?」
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