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 学校の授業の自由時間、みんなは他の友達と仲良く話してるのに、自分だけ一人。  周りが放課後どこに行くとかドラマの話とかで盛り上がってるのに、私だけは授業の課題が終わらないフリをしてる。  一人なのはいいけど、こういう和気あいあいとした空間で自分だけ一人なのって嫌。  こんな気持ち、大好きな本の中でも味わったような。  シャーペンでノートの端を黒く塗りつぶしながら考えてみると、そういえば売った本の一冊でもそんなことを言っていた。  似た気持ちを味わっていた子が、読んだ本の中にいた。その子は後から友達が出来るから厳密には私と一緒じゃないけれど、そこのモノローグの瞬間だけは、私とその子は同じだったと思う。  ぽっかりと開いたはずの私の体の穴には、捨てた本が居座っていた。  学校の帰り道にある本屋で新しい本を買う。  せっかく図書館の本でガマンしようと思ったのに、これじゃあまた部屋が元のもくあみになるのも時間の問題だなとか、おこづかいそろそろピンチなんだけどなとか、思うところはいっぱいあるけれど。  今日は本が出て行っていないことに気づけたお祝いをしたい気分だし。  この手に持っている本が楽しいのかつまらないのか、泣くのか文章力に圧倒されるのか。  全く予想がつかないまま、私はスキップするような足取りで自宅へ向かった。 
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