戦端。決意 風澄徹

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 瓦礫と砂埃が混ざった煙が吹き付けた。煙幕がかかるように粉塵が吹き上がる   「ちっ」  小さく舌打ちが聞こえる。もう一度、二発分の爆発が起きた。轟音が響いて視界を遮る煙がさらに濃くなる。  マシンガンの弾は飛んでこなかった。慌てて遮蔽の後ろに隠れる。殺気に満ちた射線が途切れてようやく一息ついた。  何が起きたのか分からなかったけど、煙を切り裂くように誰かが下りてきて僕の横に着地した。  鏡磨だった。グレネードランチャーを構えている。鏡磨がじろりと僕を見た。  気まずい沈黙が流れる。全部とは言わないだろうけど……おそらく途中からは見られていた。 「ああ、すまない……鏡」  気まずさをごまかそうとしたけど。最後まで言う前に、頬に衝撃が走った。目の前が暗くなって、硬いものに体がぶつかる。  目を開けると、目の前には硬い石の壁……それが石畳の地面で、殴られて自分がそこに倒れていることに気付くのに少し時間がかかった。  口の中に苦い血の味が染みる。 「こんなことだと思ってたぜ……」  仰向けになると、鏡磨が僕を見降ろしていた。 「いいか。俺は、この勝負が……カードだろうが、じゃんけんだろうが、殺し合いだろう奴らに譲るつもりはねぇ」  そういって鏡磨が言葉を切った。  「俺は鏡華やしづねが大事だからな。とてもな。だから関係ねえんだよ、なんだろうとな。だが」  胸ぐらをつかまれて立たされた。殴られた頬が火をつけられたように痛んで、頭がくらくらする。 「てめえは違うのか、徹。鏡華もしづねも消えて構わねぇのか?あいつらのために死んでやるのか?どうなんだ?」  殴られた衝撃で視界が回ってる気がするけど、眼鏡の奥の金色の目が僕を睨んでいるのは分かった。 「なにも思わねえんなら消えろ。腑抜け野郎は邪魔なだけだ。市民権が欲しけりゃ俺が口きいてやるよ、腐れ饅頭が」  突き飛ばされるように手を離された。冷たいコンクリートの壁にもたれかかる。  射るような視線で鏡磨が僕を見ていた。  鏡華の笑顔を思い出す。しづねさんにはどっちかというと怖い目で見られてた印象の方が強いけど。  僕等が負ければ、二人とも消えてしまう。その通りだ。そして、そのことを想像すると胸が苦しくなった。 「……ありがとう」
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