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「……死んでくれないか?」
「何を言って……」
今までとは全く違う、氷のような冷たさを感じる声がまた僕の言葉を遮った。
あれは……本当の彼の声なんだろうか。
「君たちの戦力が一人減れば僕等の勝利は近づく」
「まってくれ、まだ可能性はあるかもしれないだろう!」
こんなところで自分と殺しあうなんて御免だ。
「僕には守らなければいけないものがある」
身を乗り出そうとして声を掛けようとしたところでマシンガンの銃声がフルオートで響いた。
遮蔽の壁の破片が飛び散る。銃弾から伝わってくる……本気で僕を殺す気だ。
「君のことは嫌いじゃない。僕自身だからね。でも子供たちの未来は譲るわけにはいかない……それに」
銃声の残響が消えた。静けさが戻る。
「……君に、命を掛けてまで守るものなんてないだろう?」
静けさの中でその言葉は良く聞こえて。
見透かしたようなその言葉が胸に突き刺さった。
「死んでくれ、バスティアンの子供たちのために」
僕に守るべきものはあるんだろうか。何のための戦っている?
市民権を得るためにこの戦いに参加した。ただそれだけだ。
彼にはある。彼の背中にはたくさんの子供の命がかかっている。
彼が死んだら子供たちはどれだけ悲しむだろう。手の中のマシンガンを見る。僕は彼を撃てるのか?
不意に連射が切れた。顔を出したら、転がった車の横に彼が移動しているのが見える。
こちらからは狙いにくい。位置取りで負けてる。不味い。
とっさに後ろに下がると同時に、すぐ前にいた場所でグレネードが爆発した。僕と彼は装備も同じ。アサルトライフルのグレネードだ。
Gスプリッターを吹かして飛び、ステップを踏むように切り返しながら次の遮蔽を探す。小さな植え込みの陰まであと少し、ということろで腕にやけどをしたときの言うな感覚が走った。
マシンガンの弾が体をかすめた。血が飛び散る。バランスが崩れて足をついた。
もう一度飛ぼうとするより早く、あの日と同じ殺意の筋が僕をまっすぐにとらえていた。
逃げるより先に撃たれる、奇妙だけど確信できた……死ぬ?のか?僕は。
「……すまない」
彼の声が聞こえて、引き金を絞る音が聞こえるような気がしたその時。
その時。突然目の前で爆発が起きた。
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