戦端。決意 風澄徹

2/13
前へ
/13ページ
次へ
 その日突然、僕はアルクトゥルス学園の職員室に呼ばれた。  自分で言うのもなんだけど、僕は「優等生」で、職員室に名指しで呼ばれるなんてことはなかった。  何のことかと思っていってみたけど、そこにいたのは教師ではなく、いわゆる管理局の役人だった。  初めて会う彼はサングラスの様なインターフェイスをつけていて、愛想のない口元を崩さないまま、僕に身分証を見せて管理局の一角に同行するように命じた。  厳重に隔離された管理局の無機質な一室。そこで唐突に話されたことはあまりにも荒唐無稽な話だった。  最近時々起きている景色が突然歪む奇妙な現象の正体。僕たちと同じような世界がもう一つあるということ。そして、二つの世界が衝突して両方ともが滅びるかもしれない、ということ。  それを避けるための時空越境作戦、そして、その作戦に参加するNSDF適性が僕にあるという事。  アルクトゥルス学園からは鏡磨や鏡華、しづねさんが参加する、そして僕もそれに参加するべし、ということ。  説明を受けると守秘義務の書類にサインさせられて解放された。息苦しい感じの小さな部屋から出されて、外の空気を吸って空を見上げる。でも、なんというか実感がなかった。  アルクトゥルス学園の学生宿舎の戻るためにモノレールに乗る。  周りにはいつも通り、スーツに身を固めた大人たちや、子供連れがいて、とりとめのない話が聞こえてくる。  窓の外に流れていくのはいつもの景色だ。  ……世界が滅びそうだから、それを救うために戦え、と言われても、はいそうですか、と適応できる人間はそう多くはないと思う。  アーカイブで見た前世紀のノベルにはそういうものが結構あったけど。彼らは世界を救えといわれたときどう思ったんだろう。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加