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その次の日から訓練施設で戦うために訓練を受けた。
銃の撃ち方、Gスプリッターで空を飛ぶやり方。遮蔽の確保、援護射撃、レーダーの見方、戦況の把握、気配の消し方、察し方、傷を負ったときの心構え。
教えてくれたのは、白髪に見事な髭を生やしたおじいさんだった。
圧倒的に強く、僕と鏡磨の二人が武器を使ってもまったく歯が立たなかった。まるで映画やコミックの達人のようだった。こんな人が本当にいるなんて。
昨日まであったすべての現実が崩れ去る感覚、でも、やっぱりは実感が湧かない。
1カ月ほどの訓練を受けて、本格的に時空越境作戦に参加することになった。
◆
出撃前のブリーフィングルーム。転送装置で時空に穴をあけて過去に飛ぶ。つまり、数時間後には僕等は100年前にタイムトラベルするわけだ。
SF映画のような破天荒な話だけど、そこにいるのはもう訓練で見慣れた顔ぶれだからあんまりそんな気はしない。
「よし、俺の名を世界に刻んでやるぜ」
「お守りします、鏡磨様」
いつも通り鏡磨は意気軒昂だ。生徒会では書記を務めるしづねさんが鏡磨の後ろに控えている。
「頑張ろうね、徹君!」
「そうだね」
鏡華がいつものように笑顔を向けてくれる。でも朝のおはようというあいさつに返事をするのとは違う。
これから起きるのは……命の取り合いだ。正直言って気が進まないし、鏡磨のように世界に名を刻もうなんて思うこともない。
僕がこの「戦争」に参加するのは、世界を救いたいなんて崇高な使命じゃない。市民権のためだ。
中世ヨーロッパも裸足で逃げ出すような階級社会、第十七極東帝都管理区。この階級社会で僕のような親のいない下層市民が階層を上げようとしたらこういう方法でやるしかない。
「俺が行かなくていいのか?こんな坊やたちで大丈夫か?」
そう言ったのは、アーロン・バロウズさん。世界企業メルキゼデクの施設軍の軍人らしい。
部屋には僕ら以外にも何人もの適格者がいた。
レミーやジョナサン、茉莉さんは僕より小さい。彼らは……なぜ戦うんだろうか。生きて帰れたら聞いてみたい。
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