戦端。決意 風澄徹

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 時空越境作戦の詳しい理屈は僕にはよくわからない。  ただ、並行世界には自分と同じ自分がいて、彼らと戦うことになる、らしい。過去の時空が分岐した100年前、西暦2015年の日本で戦い、彼らを打ち破れば僕らの世界が優位になる。  その優位を積み重ねれば僕らの世界は生き残り、もう一つの世界は砕け散る、そういうことらしい。  自分と打ち合うのも、知り合いと同じ顔をした相手と打ち合うのもぞっとしない話だと思う。  時空の壁を越えて飛ばせるのは最大4人まで。常時オペレーターが僕らを見ていて、先頭不能になったら強制帰還させられる。  即死するような傷を負わなければ大丈夫だ、なんて言われたけど。銃で撃ちあうんだから、あまり救いにはならない話だと思う。  円筒状のエレベーターのようなものに4人で乗る。改めて皆の顔を見た。鏡磨はいつも通り自信満々の顔で不敵な笑みを浮かべている。しづねさんは落ち着いた感じだ。  鏡華はさすがにさっきまでと違って緊張した顔でうつむいている。手を取ってあげればいいんだろうけど…… 「時空座標を確定。転送先は2015年渋谷です」  オペレーターの九美さんの声が聞こえて、円筒状の時空転移装置の壁が光って高速で回転し始める。そして、視界が真っ白に染まった。
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