戦端。決意 風澄徹

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 僕らはすぐ打ち解けた。自分と同じ考えをしているから当然かもしれないけど。ビルの縁に腰掛ける。 「この戦いを何とか避ける方法はないのかな」 「研究はしてるみたいだね」  時空越境作戦は予定通り開始されたけど、それはそれとして問題解決のための研究は進んでいるらしい。  自分の声は、自分で話すときに耳に聞こえる声とはちょっと違う。 「君の住んでいる所はどんなところなんだい?」  彼が聞いてくる。そういえば並行世界から来ているってことらしい。  並行世界っていうならあまり変わらないんじゃないか、と思ったけど。僕の説明を聞いて彼は嘆息した。 「そうか……」  その後に出てきた言葉は意外な言葉。 「君達がうらやましいよ」 「なんで?」  言動のすべてが監視され、すべてが数値化され比較を強いられる息苦しい管理社会。  生まれた時の序列で人生のほぼすべてが決められてしまう社会。それが第十七極東管理区だ。お世辞にも楽しい所とは言えない。 「少なくとも子供がおなかをすかせて倒れたり、街角で襲われたりはしないんだろ?路地裏に誰かの死体が転がってたりとかは」 「まあ……ね」  あらゆる場面で管理される自由のない生活ではあるけど。でも、最低限の福祉は確保されている。そういうことはない。 「僕らの世界じゃそんなのは当たり前だからね」  彼が物憂げに言う。  その後に彼が教えてくれたもう一つの世界、フロンティアSは僕の想像を超える世界だった。  まさに弱肉強食。階層社会の管理区とは別の意味で中世ヨーロッパのような世界だ。  誰にも束縛されない自由な社会は羨ましいと少し思ったけど、実際にはそんな甘いものじゃないんろうな。 『おい、徹!手前ぇ!』  不意にインカムから鏡磨の声が聞こえた。 『どこで油売ってやがるんだ、援護くらいしろや!』 「行かないと」 「お互い、戦わずに済むようなやり方があったらさ、教え合おう」 「そうだね」  そうなればどれだけ素晴らしいだろう。戦わずに終わるのならば。
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