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「おい徹……お前、真面目に戦ってるのか?」
鏡磨がロッカールームで聞いてきたのは、4回目の出撃の後だった。
今回も無事に誰も死なずに済んだし、殺さずに済んだ。ちょっと安心している所で、不意打ちの様な質問。
ぶっきらぼうでちょっととげとげしい口調なのはいつものことだけど……今日はその中に詰問の調子が混ざっているのは分かった。
「……もちろんさ」
戦っているか、と言われれば……相手に僕がいる時は戦ってはいない。
他の時も真剣に相手を倒しに行っているか、といわれると正直そうとは言えないかもしれない。
今日も含めて相手に僕がいる時は戦いに参加してないから不審がられるのもわかるけど。だけど、その時は相手側の僕も戦いには参加してない。これは僕らの不戦協定だ。だから、不利になってるわけじゃない……そう自分に言い聞かせた。
それに、この戦いの目的は世界を救うことだ。並行世界の僕等を殺すことじゃない。
膠着状態を維持しているうちに、お互いに情報を持ち寄って。そして、その結果両方の世界が救われる、戦わなくていい道が見つかるならそのほうがいいに決まってる。
こうしている間に解決策が見つかるかもしれないんだから。
疑わし気な顔で僕を見ていた鏡磨が舌打ちしてロッカーの方に向き直る。
「なあ、鏡磨……一ついいか?」
「ああん?」
「鏡磨、君は何で戦うんだ?」
これはいつか誰かに聞いてみたかった質問だ。
鏡磨はメルキゼデクの幹部の息子、アルクトゥルス学園でも生徒会長を務めていて、将来は約束されている。
しかもその地位に胡坐をかくことなく、本人自身が研鑽を怠らず、誰もがその実力を認めている。その彼がなぜ命を危険にさらしてまで戦うのか。
鑑磨が僕を不審げな顔でみてしばらく沈黙した。
「……やるしかねぇんだよ、そんな時によ」
ロッカーの中を見ながら鏡磨が言う。
「……そんなこと考えてられっかよ、腐れ饅頭が」
吐き捨てるように言って、上着を羽織った鏡磨がロッカールームを出て行った。
あまり答えにはなっていなかったけど、それでも彼にも迷いとかそういうものがあるのは伝わってきた。
……明日、画期的な対策が見つかればいいのに。
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