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最初に戦闘に参加して彼に会ってから1カ月程。
その日のブリーフィングでオードナー博士が言った言葉は僕にとってはショックだった。
「残念ながら、現在の技術では融合しつつある二つの時間軸を切り離すことはできないとの結論に達した」
オードナー博士が淡々と言う。目の前が真っ暗になった。
「引き続き研究は進める。
だが、エージェント諸君はそれとは別に勝利を目指してほしい。それが現状での最善策だ。
こうしている間にも時空の融合は進行している。明日、我々の世界が砕け散る可能性もあるのだ」
「まあ仕方ないな」
アーロンさんがこともなげに言う。
「……腹くくらねぇといけねぇようだなぁ」
これは鏡磨。
「どうしようもないんでしょうか?オードナー博士?」
いつもの白衣を着て、頭髪が寂しくなったオードナー博士が僕を見る
「現状では対応策はない。残念だ」
眼鏡の奥の理知的で冷酷な目が、その言葉が嘘はないと語っていた。
残念だ、といいつつも、その口調からは何の感慨も感じられなかった。彼にとっては、確定した数式の答えを言っているようなものなんだろう。
「徹君、大丈夫?」
鏡華が僕の手を握る。でも僕はその言葉を上の空で聞いていた。
戦うしかないのか……僕自身と。
そして、この話を彼に伝えなくてはいけなんだろうか……心苦しい。でも言わなくてはいけないか。
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