踊れないプリマ

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一階のロビーにいたジュンは部下から二人は客室に入ったと連絡を受け、再びエレベーターに飛び乗り、そのドアのチャイムを鳴らした。中ではワインをボーイが持って来たと勘違いしてドアを開けるなり、「いったい何をしているんだ!」と大声で怒鳴りつけた。開き直った男は「御覧の通りさ。」と不貞腐れて答えたら、「ここを出るんだナナ!」と腕を掴んだら、「ナナさんじゃないですよ。渚さんですから、朝までこうしていたいんだけど。」と裸の女を抱きしめた。「何を証拠に言ってるんだ。」と夫の頭は混乱しながらも、コイツは美容整形外科医だ。ナナは幼い頃から美しかった。美容整形など必要ない。走ったりもできるのにあんなに愛したバレエ界から去るとは不思議だった。渚はナナの顔になりナナを殺害したのだろうと、とっさに考えた。顔は似ていても身体が違う、雰囲気も違っているのだ。裸でベッドに横たわるナナは絶対に違うのだ。眼は死んだように笑っているようにも見えた。突然バスローブを羽織りながら「そうよ、私がナナとヨシキを殺したのよ。だって、アナタもヨシキもナナと結婚したがるだけで、私は遊びの相手だけじゃないの。ヨシキもナナを好きだったから薬で関係させてやったわ。アナタだけの女じゃなかったわ。私はナナになって幸せになりたかったのよ。」と発した言葉に激高して突然ルームサービスのテーブルの上のナイフを取り上げて感情のままナナではない渚に振り下ろした。真っ白なバスローブとシーツは鮮血が飛び散り廊下に逃げたマサトは心配して駆けつけたジュンの部下に助けを求めた。救急隊員が駆けつけ、血塗れのバスローブのまま救急病院へと搬送され、ジュンは逮捕され、マサトも連行され渚は一人寂しく病院で亡くなり、翌朝朝刊には不倫妻夫に殺害されると報道された。ジュンは錯乱して取調べができない状態で鑑定留置された。ひっそりと元プリマが此の世を去ったとされた。今度は渚は事実ナナの顔のまま顔は傷つけられずに棺の中に横たわり激しく燃える炎の中に消えた。
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