甦る黒鳥

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ウラジミールの家に死んだはずのナナは住み始め、ホテルの女将からはバレエ引退したら後継者になってほしいと懇願されていた。とにかく今は毎日厳しいレッスンが続いた。バレエ団は延期になっていた『白鳥の湖』の準備に取り掛かっていた。主役は大抜擢で新人の若手で黒鳥との二役と決まっていた。ゲネプロを終えて本番の当日になり満員の観客の中にはナナの両親と下田のホテル女将も招待されていた。白鳥の新人プリマは途中脚の痛みを訴え、黒鳥の見せ場のグランフェッテの回転が出来ないかもしれないと言い出し泣き出していた。オーナーは「死ぬつもりでやれ。」と言いながらも頭を抱え込んでいた。黒鳥の出番を控えていだか、立てないと言い出し、「バレエ団を潰す気か!」と怒鳴られ代役が急遽黒の衣裳に着替えスタンバイをうつむきながらしていた時に突然もう一羽の別の黒鳥が妖しげに堂々と背後から現れ、オーケストラのの演奏する曲と共に舞台へ飛び出して行った。ナナだった。観客の騒めきをもかき消すほどの完璧な踊りに全てを圧倒し、勝ち誇り王子を誘惑する圧巻の踊りに全ての人々が魅了され、白鳥もナナが代役で最後まで踊り遂げた。割れんばかりの拍手喝采にアンコールが何度も何度も叫ばれ、蘇ったプリマバレリーナと翌朝のスポーツ紙のインタビュー記事には『ナナは生きていた。ナナ復活。ウラジミール氏は語る。』と書きたてられていたが、『若女将はプリマバレリーナだった。』と地方紙には文字が踊り、後にナナはウラジミールと結ばれて男の子が生まれて名前はマサルと名付けられ、設立したバレエ団の後継者にはなってはくれずにフィギュアスケーターになりカナダに留学し、世界初の五回転ジャンプを成功させ、バレエ団は誰が継ぐのかとナナの憂鬱は続いていたが幸せに包まれていた。
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