クリスマス

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ナナはクリスマスが近づくと毎年恒例行事『くるみ割り人形』の準備が始まり、中学生の頃にやっと勝ち取った少女クララの役を楽しく練習していた事を懐かしく思い出していた。今冬はまた『花のワルツ』かとポツリと呟きながらも、三十歳を前にして主役を踊れないもどかしさに苦悩しながらも、幼い頃に既にバレエを卒業してOLをしながら二人とも未だ独身の大親友の渚から、今夜合コンのラインを深い溜息を吐きながらボンヤリと眺めていた。「仕方ない行くか。」とまた独り言を吐きながら気怠そうにトウシューズのリボンを解きながら着替えを済ませた。いつもの新宿の交番前で待ち合わせ会場へと向かった。渚が先に来ていた。「何、渚、今夜力入り過ぎじゃないの。私なんか練習帰りだから普段着なんだけと。」「あなたは良いのよ、スタイルが決まってるから脱いだら一発決まるんだから。」と笑った。「何言ってんのよ。合コンで脱ぐわけないじゃないの。」夜の新宿裏道ではない高級ホテルの会場へと案内された。「渚、ちょっとこんな高級なところ会費高いんじゃないの?大丈夫なの。私、お金持ってないんだけど。」渚は落ち着いて「大丈夫よ。女性は無料だから、安心して。」ナナは不安げな表情で「怪しげなんじゃないの。私帰りたくなったわ。」エレベーターの最上階を押しながら、「平気よ。私、2回目だから慣れてる。」あっという間に会場階に到着し、受付へとナナはまるで舞台上をトウシューズで登場するようにまるで初舞台のような気持ちで姿勢は整いながら、心はヘッピリ腰で中に渚に押し込まれてしまっていた。豪華絢爛眩いシャンデリアの妖しげな灯りではあったが、金持ちしかいない雰囲気が漂い、カクテルドレスを着ていないナナは小声で「渚、私、悪いけど帰るわ。」と囁き、出ようとした其の時、ダンディイケメンに声をかけられ、仕方なくとどまった。「初めまして。サトシです。宜しく御願い致します。シャンパンで乾杯しませんか。」特に司会者がいるわけではなく、常連さんばかりが集まっている趣味の会のようだった。
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