クリスマス

5/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
空腹のナナは喉を詰まらせそうになりながらオードブルやサンドイッチをがっついてしまいそうだったが、ジュンには気づかれないようにと恥ずかしそうに食べていた。カクテル二杯目で急に眠気に襲われ、疲れが出たのだと、こんなところで眠ってはいけないと必死になり閉じようとする眼を見開いていたが、いつの間にか深い眠りについてしまっていた。気付いたらベッドの中に居て、どうやらホテルに宿泊してしまっていて、ツインベッドの向こう側には渚が眠っていた。何がなんだか分からなくなり、何故渚が隣のベッドに寝ているのだろうか不思議でならなかった。真実を知るのは翌年になってからのことだった。思わずナナは渚を揺り起こしてしまいそうになったが、まだ夜中の三時であり、頭がボンヤリと重く、また眠りについてしまい、朝には渚に起こされていた。「おはよう。ナナ大丈夫?」と渚は心配そうにしていた。「私、昨夜はジュンさんとバーのカウンターで飲んでたんだけど、急に眠くなり気付いたらここに居て、夜中に目覚めたんだけどまた眠ってしまったわ。私、疲れていたのね。」渚は「夜中にジュンさんから電話きて、ナナが倒れたから助けて欲しいと言われたの。病では無さそうだったから彼にここに運んで貰い、私が付き添う事になったのよ。身体大丈夫なの?」ナナは「疲れが出たみたい。カクテル空きっ腹に効いたみたいね。覚えてなくて。」と何の疑いもなく笑って「ジュンさんにも渚にも迷惑かけてしまったわ。」とションボリしてしまっていたが、「気にすることないわ。昨夜は私暇だったから大丈夫よ。ジュンさんに連絡したら良いわよ。心配していたから。ホテルのモーニングに誘ったらどう?彼は貴女に夢中だから飛んで来るかもよ。」そう言われて顔を赤らめ早速ラインしたら即返信が届き、ホテルに向かってるとあったが、昨夜から他の階の別室に宿泊していた事は明かさなかった。レストランでモーニングをしようとしたらジュンが駆けつけた。息を切らしている振りをしながら「おはよう。ナナさんお身体大丈夫?バレエのレッスンで疲れたのかな?今から内科にかかったらどうかな。僕は心配だな。」しかし、三人で笑いながら楽しい朝食で、「食欲あるから心配ないかな。でも僕のかかりつけ内科クリニックに送るよ。」と渚と別れてナナははジュンの車に乗った。地獄への階段を上りかけるのも知らずに一日の爽やかな朝に霧がかかっていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!