クリスマス

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パーティーの後には何故かお誘いがなく、もう嫌われてしまったのかと淋しい気持ちには浸ってはいられなかった。明日新春公演の配役を発表するとオーナーから言われ、『眠れる森の美女』に決定していることは公表されていた。しかし、オーナーが御機嫌になり過ぎヘベレケ状態になり、御開きになる前に、「オーロラ姫はナナだ!」と叫んでしまったものだから、役員一同も大慌てになったが、間違えてはいなかったので苦笑していた。ナナはオーナーは酷く酔っているから冗談を言ったと思っていた。ジュンが背後から耳元で囁いた。「本当の事なんだよ。」との声に足が止まった。いつの間にか二人でロビーの片隅に居た。真実が知りたくてジュンとタクシーに乗った。最初の出会いのホテルの前に止まり、ジュンがオフィスにしている客室へ一緒に来てしまっていた。ドアを閉めるや否や強く抱き締められながら、「好きだ。愛してる。」の言葉より、主役になる真実を知りたくてされるがままになっていた。ベッドの上で「君がオーロラだよ。」を何度も囁かれ、身体を許してしまった自分自身を恥じながらも、「君とは二度目なんだよ。」と言う真実を語られ、あの夜だった事を知り、思わず「渚とは?」と叫んだら「あの子とは遊びなだけだよ。妻とは離婚問題で裁判になっている。」と嘘をつき、「君は永遠に主役だよ。バレエ団を持たせてあげる。」の言葉に陥落し、朝まで何度も何度も愛を重ねてしまっていた。ジュンに朝11時に新春公演の配役を貼り出してあるから見に行ったら良いよ。」とモーニングコーヒーを飲みながら言われて、熱いキスをした後にバレエ団の本部へと駆け出し、息を切らしながら、オーロラ姫は私だと頬をつねりながら、ジュンが待っているホテルへと向かい、また熱く抱き合いながら、午後からは新春公演のレッスンが始まり、殺風景なワンルームマンションから広い高層マンションの最上階に移り、ジュンとの新しい暮らしが始まったが、それを渚が許そうとはしなかった。二人だけのクリスマスパーティーと除夜の鐘をテレビで聞きながら、束の間の幸せな時間から階段は一段ずつ知らぬ間に不幸の底無し沼にでも落ちて行くことなど二人はまだ気づいていなかった。渚から会いたいとLINEが入ったが、レッスンで忙しいと断っていた。
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