悩めるあなたへ

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 さて、せっかくですからあなたの参考になるかはわかりませんが、私の昔話をしようと思います。それと自己紹介を。私は現実世界では、永里理沙という名前を持っています。  母は私が6歳の時に死にました。癌だったようです。正直あまり覚えていませんし、詳しい話も聞いていません。  父は私が19歳の時に死にました。交通事故でした。父は大変に大きな企業の経営者でしたから、保険金も含め、私は莫大な父の遺産を相続したのです。  とは言いましても、私は月に一度、生活するには十分なだけの額を振り込まれるだけです。それは今も変わりません。  父は自分に万一の事があった場合、私がその遺産を計画的に利用し、一生困らずに暮らせるようにとそのようなシステムを準備していたのです。  私はひとりっ子。その上、頼れる近しい親戚はいませんでした。私は父が死んでから今に至るまで、とあるマンションの一室に一人で住んでいます。  父が他界した時、私は大学生でした。しかし大学に私の居場所はありませんでした。初対面の人と明るく話せるような能力を、私は持ち合わせていなかったのです。それでも少ないながら友達はできるのですが、その友達とすら、私は満足にコミュニケーションをとることができませんでした。結果として私はいつも一人でした。勿論、彼氏がいたことなどありません。  暗くて仕事の遅い、コミュニケーションもまともにできない私はアルバイト先でも疎まれていました。私の容姿はお世辞にも美しいと言えるようなものではありませんでしたから、そもそも第一印象から悪いのです。その上、愛想もない。今にして考えてみれば、疎まれないわけがありません。
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