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それからしばらくして、キシに背中を向けてテーブルの上のマグカップを見ていると、キシが、 「あっ」 と叫んで起き上がり、僕を乗り越えてベッドを降りた。 「なに?」 「洗濯物、忘れてた…」 ベッドの足元の方でカーテンと窓を開けて、キシはベランダに出て行った。 起き上がると、部屋の空気が動いているから少し肌寒かった。 僕はテーブルの前の椅子に座り直し、キシがハンガーに掛かったままの服を無造作にソファーに投げ出すのを、見ていた。 「そのシャツ、昨日着てた」 「ああ。よく見てんね」 「まあ」 キシはひとしきり洗濯物を畳んだり、クローゼットにしまったりした後、キッチンに入っていった。 「お腹空いてる?」 「空いてない」 「でも、パスタぐらい食えない?」 キシがキッチンに立ち、僕は冷めたコーヒーを時々口に運びながら、座っていた。昨日飲んだ冷めたコーヒーが、ぼんやり意識に浮かんでいた。 「上野って、兄弟いるの?」 「は、なんで?急に」 「そういえば知らないな、と思って」 「…興味ないだろ」 「や、興味なくはない」 「まあ、姉がいるけど」 キシは、やはり興味がなさそうに見えた。 「キシさんは?」 「兄と弟」 「へえ」     
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