オープニング

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 その父が残した借金を返済するため、母は仕事を掛け持ちしながらも、千聖を育ててくれている。アルバイトを探しているのは、少しでも家計の足しにするためだ。  周囲の学生たちは、「アルバイトって、もっと大学に慣れてから始めたほうがいいんじゃない?」と言っているのだが、千聖はこうと決めたらすぐに行動しないと気が済まない。いわゆる、せっかちなのだ。今日の講義は全て終わったので、次はアルバイト情報誌を探しに行こうと、千聖は大学を後にした。  自転車に乗り、最寄り駅へと向かう。そこから電車で五駅、繁華街とは逆向きに進めば千聖の家がある街だ。改札を出て、一気に静かになってきた商店街に向けて歩きながら、本屋かコンビニエンスストア、どちらに行くかを考えていた時だった。 (あれ? こんなお店、あったっけ?)  アーケードの手前、交差点近くの角に、見慣れぬ店が構えてあった。千聖自身も商店街近くまでやってくるのは約一週間ぶりなのだが、それでも建設中ならば目につくはずである。  ペールグリーンのペンキで塗られた壁、セピア色の屋根と扉。植木鉢に咲いた黄色と白の花々。四角い窓からは中が見えそうなのだが、開店前なのか、暗くてよく分からない。千聖は興味津々で、引き寄せられるように、入り口の扉へと近付いた。そこには紙が貼ってある。     
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