初ログイン (八歳児編)

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 視界を覆う光が最高潮に達した時、突如ドシンと身体が落ちる感覚を味わった。 「あだ!」  背中を強く打ちつけて呼吸が難しくなる。  なんだ!? いきなり敵襲か!?  異世界だとは聞いていたがいきなり攻撃をするとは!  混乱しつつ立ち上がると今度は頭部に激しい衝撃が走る。 「おご!?」  脳天を殴られたような痛みに涙目になりながら周りを見る。  視界に映るのは質素な部屋。  木で出来た床、若干薄汚れた壁と二段ベッドが二つ見える。  ……どこだここ。  首を捻ると、そこが自分が暮らす教会の子供部屋だと気づく。  ああ、記憶を持つってこういう事か。  必要に応じてその記憶を思い出すのか。  どうやら俺はベッドから落ちて、立ち上がったところ二段目のベッドの一部に頭をぶつけたみたいだ。  いきなりとんでもないダメージだったから混乱してた。    窓ガラスに近寄る。  外に見えるのは、放牧的な風景。  テレビで流れる海外の旅番組で見る様な感じだ。  しかし、俺はガラスに映る自分の顔を見て唖然とする。 「……なんだこれは」  自分の口から洩れる声が高い。  子供だから声変わりしていないのだと言い聞かせる。  その時後ろの扉がガチャリと開かれる音がする。 「あ、ニーナ! 熱収まったのね!」  振り返ると同時に抱き付かれる。  同じくらいの背格好の女の子。  茶色の髪でクリッとした瞳が印象的な子。 「ミリー……」  そうだ、この子はミリーで俺と同い年だった。  あまり綺麗とは言えない古着を来た彼女は、俺を見て嬉しそうに笑う。 「でもすぐ起きちゃだめだよ? 今からシスターを呼んでくるね!」  そう言ってミリーは部屋を出て行く。  残された俺はゆっくりとベッドに腰を下ろして頭を掻ける。  ニーナ。  ミリーは確かにそう俺を呼んだ。  どういう訳か、先ほどまで自分が何て呼ばれていたのか分からなかった。  だが先ほどの一言で溢れる様に、自分の情報が出てきた。  赤ん坊の時にこの孤児院の前に捨てられて、偶然見回りをしていたシスターによって発見された。  そのまま孤児院にお世話になり、今日まで過ごしてきた。  そして……。  俺は、女だった。
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