初ログイン (八歳児編)

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 ~~シスター視点~~  私は多くの子供たちを育ててきました、ある子供は十六歳になると同時に冒険者になり、またある子供は著名な貴族様に跡取りとして迎え入れられました。  そして今日また、一人我が家から一人の少女が旅立とうとしています。  その子の名はニーナ。  太陽の様に綺麗な髪と、青空を思わせる碧眼。  私は彼女を見る度、あの日の事を今でも鮮明に思い出します。  それは風もなく、雲もなく、非常に過ごしやすい満月の晩でした。  普段ならそんな事もしないのですが、ふと夜風に当たりたくなった私は見回りついでに外へ出たのです。  すると真夜中だというのに、まるで昼間の様に眩い光が孤児院の前に降り注いだのです。  何事かと眺めていると、光は収まり、残されたのは小さな籠。  それは、よく買い物をする時に使われるような簡単な籠でした。  おぎゃあおぎゃあと、幼い赤子の鳴き声が聞こえ、まさかと駆け寄ればそこには生まれて間もない赤子が、上質な布に包まって泣いているではありませんか。  先ほどの光と、突然現れた赤子。  私はこの子を神が遣わしたのだと思い、即座に教会に向かえました。  それから私は、赤子を豊穣の女神ニーナ様から名を戴きニーナと名付けました  その子はとても健康的に育ち、決して良い環境ではないこの教会でも、その髪と瞳の輝きは焦ることなく、周囲の子供たちを照らしました。  皆、親を争いで失ったり、捨てられた子供たち、だからこそその心は酷くすさみ、私がどんなに手を尽くしても、心を開かない子供がどうしても現れたのです。  そんな彼らを癒したのはニーナ、彼女でした。 .   優しい彼女の心に触れた皆、本来の優しい心を取り戻し、実に素直な子らへと戻りました。  そんな彼女が、高熱にうなされ、回復するとこれまでの神がかった雰囲気はなりを収め、年相応の少女の様になっていました。  何があったのかと思いましたが、ニーナを迎えに来ていたシュミット夫妻と引き合わせた時、ああと納得しました。  彼女はやっと頼れる家族を見つけ、心を休める時が来たのだと。 「たまにでいいから、ここの皆と会いたい」  その言葉を聞いて、思わずそっと扉を開き、新たな家族とぎこちなく、それでも笑みを浮かべて抱擁し合う彼女をみて思わず涙が零れました。  ニーナは離れても尚、ここの子らを想うのですね。  ああ、ニーナの人生に幸あらん事を。
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