初ログイン (八歳児編)

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 ~~ニーナ視点~~  その日の内に俺はシュミット夫妻に迎えられることになった。  シスターは一言だけ 「貴女は、もっと自分の幸せにどん欲になりなさい。きっとみんなそう願ってるから」  そう告げられた。  だが、孤児院を出ていく事を聞いたダニエルが驚いて、何度も引き留めようとした。  それをミリーは止める。 「何で止めるんだよ! ニーナが行っちゃうんだぞ!」  両目に涙を溜めて叫ぶダニエルを、ミリーは肩を震わせて黙る。 「ダニエル」  名前を呼ぶと、ダニエルは弾かれたようにこちらを向く。 「に、ニーナ」 「風邪ひかないでね、ダニエルは男の子だからミリーや他の女の子を守ってあげて」 「お、俺……俺!」 「大丈夫、また会えるから」 「そうじゃない、そうじゃないよニーナ!」  涙でぐしゃぐしゃになったダニエルが、自分の思いを言葉に出来ず、ズボンの裾を目いっぱい握りしめた。  するとメアリーはダニエルの前まで歩み出ると、目の前でしゃがみ目線を合わせると、彼の頭を撫でた。 「ニーナを今日まで守ってくれてありがとう。貴方のお蔭で私たちはニーナと出会えたのね」  すると涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、ダニエルが叫ぶ。 「ぜっだい、ニーナを、幸ぜにじろよ!」 「ああ、勿論。男の約束だ」  ローガンは、そう言ってダニエルの手をしっかりと握った。  ダニエルは涙をぬぐいながら頷く。  何か言わなきゃ。  そんな思いが身体を動かした。 「ダニエル」 「ニーナ」 「おっきくなったら、また皆で一緒にあそぼうね」 「……うん!」  ダニエルはぐしゃぐしゃの顔で笑う。  未だ涙は溢れるが、最後の最後まで泣いてる姿は見せたくないのだろう。  だから俺は、彼に背を向けて新しい両親の元へ向かう。 「……いいのかい?」 「うん、ダニエルもこれ以上見られたくないと思う」  そういうと二人は驚いた顔で見合わせた。 「あらあら、小さいのにもう男の子の心を掴んじゃうのね。我が娘ながら末恐ろしいわ」 「うーん、僕としては何とも言い難いなぁ、頼むから悪女にはならないでくれよ? ニーナ」  二人の言ってる言葉に思わず苦笑いしながら、孤児院を後にした。  背後から子供たちの別れの声と、またねと言う言葉を聞きながら。
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