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暖かい。
ふわふわで、いい匂い。それに時折頬を撫でる様な感覚が心地よい。
ゆさゆさ……。
「お嬢様、そろそろ起きてください」
「んぅ~……ねむい……」
「く――……強敵だ、しかしッこのローランド心を鬼にしてお嬢様を起こさねばッ」
なにやら近くで呻いてる声が聞こえる。
なんだよもう、まだ寝たいのに。
重い瞼を上げながら、周囲を見回すとそこに一人の男性が立っていた。
たしかこの人の名前は……。
「お、おはようございます、ローランド、さん」
「ローランドで結構ですよ、お嬢様」
そう言って手拭いを手渡してきたのはローランドと言って父様の執事だ。
真っ白な白髪を綺麗に整えた姿は、明らかに父様より年上の五十代後半で、まさに執事と言った風貌だ。
ちなみに両親の事は無難に母様、父様と呼ぶことになった。
だが両親はそれでも不服らしく、一日一回は甘えながらお父さん、お母さん、と呼ぶように決められてしまった。
どれだけ親バカなのか。
するとローランドと一緒に入ってきたメイドの一人がテキパキと洋服を準備した。
「え、っと……それは一体」
「お嬢様のお召し物ですが……?」
それは分かる。
洋服だもんな。
だけど、すげぇフリフリなのはなぜかな?
ウェディングケーキと変わらないくらい装飾過多だぞ。
俺の言い分に気付いたローランドが苦笑いする。
「実はこちらは奥様がお嬢様の為に用意したドレスの一着でして……」
「え……母様が?」
しかも用意したドレスの一着って言ったぞ。
つまりこれクラスのドレスがまだ複数あるってことか。
メイドさんはドレスを持って近寄ってくる。みんな目を爛々と輝かせていて、何やら怪しい光を放っている。
「ひぇ」
「お嬢様、ご辛抱ください」
「では私は外にてお待ちしています」
ローランドは回れ右すると、部屋から出て行った。
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