宣伝と開店(八歳児編)

15/28
前へ
/502ページ
次へ
 数度連続して木刀を振るう。  すると、彼の表情が少し変わる。 「すまない、コレを通常の剣と打ち合ってもいいか? 強度を知りたい」 「ええ、勿論です」  そういうと彼の仲間が剣を抜いて、木刀を持った彼と向きあう。  その場で数度の激しい打ち合い。  倒す為ではなく、剣と木刀を打ち合わせるだけのぶつかり合い。  それでも威力はかなりの物だというのが分かる。  ……もしかして、あの人たち結構強いんじゃないか?  激しい金属音と、木刀特有の打撃音が響き終わると、彼はふうと息をついて頷いた。 「おどろいた、傷は多少ついてるが全く折れる気配がない」 「ああ、こっちもへし折るくらいのつもりで切ってたんだが、歯が立たないとはまさにこの事だな」 「軽さも中々いい、疲弊してる時にこれを持っていれば、幾分か楽に戦えるかもな。なにより、これだけ丈夫なら疲れてる時に、支えにして歩く事も出来る」 「ああ、それは地味にありがたいな。昔剣を支えに歩いてたらぽっきり折れて泣きたくなった事もある」  二人の会話に同じ冒険者で、経験のあったであろう人がウンウンと頷いていた。  こっそりと、アーリアが耳元で教えてくれたのだが、初心者冒険者が剣を折る理由の三割ほどが『疲れ切って剣を支えに歩いていた時に折れる』だそうだ。  鉄製武器と言っても、戦いで耐久値を減らし、人の体重をかけられれば当然のように折れるらしい。  普通の鉄剣であれば、持って帰るにも重いし、打ち直すより新しく買った方が安い為捨ててしまう人が多いらしい。  それに関しては木刀も同じだろうが、鉄剣に比べて安い軽い嵩張(かさば)らないという三コンボ。  仮に折れてしまってもウチの商店へ持ち込んでくれれば、その木刀の端材を買い取る形で新たな木刀を更に多少安く提供するというサービスを行っている。    
/502ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1598人が本棚に入れています
本棚に追加