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「端材なんて何に使うんだ? 薪か?」
ちょうど同じ質問を受けていた冒険者が、当然の疑問を浮かべる。
それに対して従業員が自信たっぷりに答える。
「それもいいのですが、こちらにある爪拳をご覧ください」
取り出されたのは、母様が気に居た拳に爪のついた武器。
「こちらの爪部分はその木刀と同じ魔物木材の最も固い芯の部分を使っております。
一部が折れた程度であれば、それを削り出し、新たな武器のパーツとして、加工する事も可能です。ですのでこちらとしても資材の削減が出来て助かるのです」
「へえ、そういうことか。ちなみに武器を俺たちが購入した後改造とかしてもいいのか?」
「それに関してはお客様の自由です。ですが、武具に刻まれた生産番号に関しては破損成されないようお願いいたします。それが失われると当店のサービスを受けられなくなりますので」
「せいさんばんごう? サービスって何だ?」
「ご説明いたします。生産番号とは、この品を当店の専門職人が作った物だと管理するものです。恐らく模造品や、類似品が出る可能性がございますので、それの対応策だと思って頂ければ。
また、その刻印が残っている物に限って破損、もしくは破損間近の物を銅貨五枚で新品と交換させて頂きます。番号はその時に引き継がせて頂きます」
そう説明すると周囲の冒険者がざわめきだす。
「交換だって!?」
「おいおい、まじかよ。いくら何でも話がうますぎねぇか」
「ああ、そんなのやってたら採算取れねぇぜ」
そんな彼らのざわめきに従業員がこれまた自信たっぷりに答える。
それは交換についてのルール。
一つ、一ヶ月に付き、交換の受付は六十件まで、それに漏れた人は端材買取で安くなった武具を新たに購入するか、来月を待つかとなる。(この世界の一ヶ月は、九十日なので約三か月後になる)
二つ、その武具がこの店で買った物である事。
三つ、交換査定は従業員が行い、それに漏れた場合は対象外とする。
(模造品、交換不要な備品、製造番号の確認が取れない等)
それらを伝え終わると、こほんと一度咳払いをして間をあけてから続ける。
「本日、お品を見て購入を見合わせる方々は、後日騎士団大会にて、我が店舗のオーナーであるシュミット侯爵家様がこれらの武具を用いて、模擬戦の参加をする予定ですので、参考がてらご覧に頂ければと思います」
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