宣伝と開店(八歳児編)

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 店の営業初日はいい感じだった。  出来れば一日張り付いて見守りたいのだが、騎士団の訓練もある為これ以上、彼らを放置するわけにもいかない。  屋敷に戻り着替えると、待ってましたと言わんばかりの団長のルーファスに声をかけて訓練に向かう。  出発直前に、屋敷のメイドから『トルティオ様から試作品が届いております』と一つのロングソードを手渡された。  それを見て団長のルーファスがそわそわとしていたが、それに関しては後ほどと伝えるとこれまた目に見えて落ち込んだ。  最近、彼らが犬にしか見えない。  ボール投げたら取りに行きそうな勢いだ。  そして、到着した草原。  現在訓練の為に周囲の小さな魔物を狩り取っている。  初めて見た魔物はバスケットボールくらいのネズミだった。  最初は可愛いと思ったが、こちらを見るなりものすごい勢いで逃げてしまった。  ……あまりにも見事な逃げっぷりに、キャロが『やっぱ獣は本能でわかるんっすねぇ』と言っていたので、お仕置きとしてお尻を引っ叩いた。  その時『あひぃ!』と、何やら嬉しそうだったのが正直困る。  ミミもそうだが、彼女たちはちょっとMッ気が強すぎる気がする。  それはともかく、出発前に受け取ったトルティオからの試作品を試しておこう。  形状はやや特殊。  前世で言うところのククリとよばれる、湾曲した刀身の短弧側に刃を持つ「内反り」と呼ばれる様式の刃物。  刀身の長さは六十センチ程で、重さも問題ない。  ……まあ、俺のステータスのお陰って可能性もあるが。  素材は木材なので刃その物がやや分厚く、切りつけてもせいぜい表面的な傷をつける程度だ。  代案として、刃の部分をのこぎりの様にギザギザにして、表面ダメージを増やすことにした。  何よりこの武器の一番の見どころは、別にある。  刃の内部に仕込まれたギミックだ。 「それはどう使うのですか?」  ルーファスが、ついに堪えきれず質問をしてきたので、ニヤリと笑って武器を構える。  グリップをしっかりと握る。  数度その場でククリナイフを振るう。
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