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鋭く振るうとヒュンと、風を切る音が徐々に甲高くなっていく。
どうやらこれも剣術スキルに当て嵌まるらしく、どんどん速度を上げても問題ない。
「おお、流石はお嬢様」
ルーファスが何やら関心をしている。
その隣でアーリアやキャロまでも、ニコニコとこちらを見つめている。
「この武器の凄い所はここからだよ!」
そう言って、グリップの一部、ボタンの様に飛び出た部分を押し込む。
すると、かちりと音を立てて剣が崩壊した。
「なっ」
その場で見ていた者は、そう見えただろう。
だが実際は違う。
構わず腕を振るう。
だが、それまでの直線的な振り方ではなく、肩から腕の先までをしならせるように、腕を振るう。
すると崩壊したと思われた剣が、まるで蛇の様に踊る。
シャラララと何かが滑るような音。
それがまるで本物の蛇を連想させる。
……良い仕事するじゃないか。
思わずニヤリと笑みを浮かべてしまう。
近くにあった訓練用の的めがけて柄を振り下ろす。
それに追従するように、長く伸びた剣が的へと延び、ガスッ! と音を立てて突き刺さる。
そうして初めてルーファスやアーリア達は俺の振るっていた武器の正体を見る。
それは剣が、細かく分断され、細い鉄製の紐によってつなげられた、蛇腹剣と呼ばれる前世でゲームで見た武器。
まるで鞭の様に振るう事で、従来の剣としての直線的な軌道から、回り込むような斬撃が襲う、まさに蛇のように恐ろしい武器だった。
ルーファスは、的から俺の手元までをじっくりと眺めて、困惑の表情を浮かべた。
「それは剣……ですか?」
「はい。暫定ですが『ウィップソード』と言います」
グッと突き刺さったままの剣を引き抜き、グリップのボタンを再び押すと、ワイヤーを巻き取るような音を立てて、伸びきっていた剣が元の形に戻る。
引き戻す時、ちょっと跳ねるからその時だけ注意が必要なんだよね。
「試作品だけどね。ルーファスこれをちょっと使ってみてください」
「わ、私ですか!?」
俺が頷いて手渡すと、彼は緊張した面持ちでグリップを握る。
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