宣伝と開店(八歳児編)

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 ボンザが帰ったあと、ハルトは私のいる部屋にノックのあと入ってきた。 「お疲れさま、ハルト」 「いえ、疲れてなど」 「ありがとうね、ボンザの相手をしてくれて」 「いえ、滅相もございません。この店の店長代理という大きな任を任されている以上、ああいった手合いの対応も私の業務の一つ。苦ではございません」  うん、すごい模範的回答でびっくりだよ。  俺も昔、職場を見に来た社長に『お疲れさま』と言われたとき似たように答えた。  ちなみに俺の後輩は『ええ、疲れました』と答えたら、その後、上司に『お前の部下何考えてんだ!』と俺がなぜか怒られた。  部下の教育不足という体で俺が叱られ、当の本人は『災難でしたねー』と暢気にしていて、軽く殺意を覚えた記憶がある。  っと、俺のことはどうでもいいな。  とにかく彼の仕事っぷりに助られてるのは間違いない。ここはひとつホワイト企業目指して、しっかりと労うとするか。 「ハルト君が私の代わりに対応してくれたおかげで、ボンザへの対応や今後の方針が決まったよ。よく私まで通さずに止めてくれたね、いい判断だったと思うよ。ありがとうね」  俺が上司ってことで、威圧しないように笑顔を乗せて優しく言うと、ハルト君は顔を真っ赤にして。 「い、いえ! お、おおお嬢様の下で働けることは、わわわ、私にとっても幸せなことなのででで!」  えらい慌ててしまった。  ……まだ、威圧感あったかなぁ。  おかしいなぁ。  首を捻っていると、彼は思い出したように一つの書類を取り出した。 「そういえば、この数日の売り上げを纏めてみました。良ければご覧ください」  おお、それは気になるね。 「うん、見せてもらうね」  受け取った収支を見ると、綺麗に纏められた文字で何が幾つ売れたのか、いくらの利益になるのか、在庫の数、入荷予定数などが事細かに記されていた。
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