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そうしてやってきた第三試合。
試合相手はゲリュド領の大鷹騎士団が勝利を納めたようで、彼らが次の相手。
こう言ってはなんだが、非常にシンプルな試合相手だった。
大鷲というからどんなものかと思いきや、これまた普通の編成でやや弓兵が多いなと感じる程度。
アーリアが前もって調べた情報では、おそらく前衛で戦う騎士たちの援護をする彼らが優れた弓の名手揃いで、乱戦のなか的確に敵の身を打ち抜くという狙撃を主体にしたスタイルで、ここまでの試合勝ち抜いてきたそうだ。
普段後方で弓を構える弓兵は、乱戦になると敵に接近戦に持ち込まれた際に対応するために剣を一本常備している。
しかし彼らの防具は弓を打つ際に、それ阻害を越さない様非常に薄くその上軽い物に変更している上に、帯剣すらしていない。
完全に接近戦を想定していない装備であることは間違いない。
それほどまでに前衛の事を信頼しているのだと分かり、俺は思わずうなってしまった。
騎士団が前もって手に入れていた資料に目を通すと、そこには大鷲騎士団の細かな情報や、所属する領地関しての事柄が記載されていた。
大鷹騎士団は、彼らの持つ『鷹の目』と呼ばれる二つ名が由来しているとの事。
詳しい話は省くが、彼らの住むゲリュド領は飛行型の魔物が多く発生するらしく、それらを倒すために弓兵の強化が最優先で進められた結果、上空で素早く動き、激しく入り乱れる魔物との乱戦の最中でも、標的を寸分違わず射貫く実力をもつまで至ったらしい。
ゆえに彼らは、敵味方が入り乱れる最前線であっても常に矢を的確に狙い定めて来る。
まさに「鷹の目」という奴だ。
激しい戦闘が繰り広げられる会場を眺める。
前線は黒騎士達が城塞盾を隙間なく立てることで、矢が後方に飛ぶのを防ぐ。
それをこじ開けようと剣を振るう大鷲騎士団。
押しては引いての繰り返しが繰り広げられていた。
流石の黒翼騎士団も剣と弓の両方で攻め込まれては、押し返すには一度盾に張り付いた敵をはがさなくてはならない。
しかし、それをしようと剣を振るえばその隙間から矢が飛んでくる。
相手の剣士が並であることが唯一の救いだが、それでも厄介であることに変わりない。
だが、攻めきれずにいたの大鷲騎士団も同じだった。
これまで的確な援護を受けて戦況を有利に運んでいたが、城壁盾という守りに特化した防具のせいで普段の作戦が発揮できないでいた。
膠着状態。
そんな言葉がしっくりくる状態になり始めた頃。
状況を大きく動かしたのが、黒翼騎士団にいる弓使いのミリアリアとポッドだった。
二人は全ての弓兵を引き連れ大きく後退。
何をする気かと注目していると彼らは、俺も知らない形状の武器をその場で組み立て始めたのだ。
一見すると積み木のような見た目をした部品を器用に組み立てて行き、慣れた様子で完成させていく。
時間にしておよそ10分未満、通常の戦場では些か時間がかかり過ぎではあるが事この試合においては、その時間的余裕は十分にあった。
俺は戦場への持ち込みは武器のみと決められていることを知っていたが、まさかその場で組み立てる様な代物とは思わなかった。
周囲から文句が出ていないところを見ると、アレは一応セーフらしい。
暫く弓兵の援護無しで乱戦を抑えるのは、城壁盾より前に出てウィップソードを縦横無尽に振るい一騎当千の勢いで戦い続けるルーファス。
ルーファスの身体を覆うようにうねる刃は、降り注ぐ矢をも切り裂き敵兵を押し留める。まさに攻守一体となった攻撃。
だが、それほどの猛攻を長時間繰り出すにはルーファスの体力も限界が近づきつつあった。
本来、剣とは十キロ前後ある。
しかし彼の操るウィップソードは、大きく伸びる機構を作るために丈夫な鋼の糸を内蔵し、その上剣自体も通常の物よりやや長めになっている。
その結果、鉄剣の1.5倍ほどの重量となっている。それを矢と剣戟を防ぐ速度で振り回すのは彼のスタミナを著しく削っていた。
カイトも副団長のレオンと共に前衛の騎士を引きつける。
流石の弓兵も大きく後退したミリアリアたちまでは矢が届かず、追跡をするべきか前衛の援護をするべきか、一瞬悩んだそぶりを見せた後、援護を選ぶ。
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