1598人が本棚に入れています
本棚に追加
そうこうしている間に完成した物を見て、思わず俺はガタリと立ち上がってしまった。
突然動いた俺にアーリア達には何事かと驚かれてしまったが、致し方ないというものだ。
なんせ彼女たちのくみ上げた物は、ゲームなんかでよく見る攻城兵器のバリスタだったのだ。
よくよく見れば非常にスマートなデザインで、なおかつ細かなパーツで組み立てた事もあり、少々貧相な印象を受けた。
弓兵が二人係で弓を一定の範囲まで引き絞り留め金に引っ掛けると、そこには矢ではなく大量のこぶし大の石を弦にセットされる。
それがおよそ五台並ぶ。
「なるほど……」
アレは投射砲の巨大化バージョンだ。
見れば見るほど投射砲のイメージに近いデザインだ。
しかもよく見れば射角調整用のハンドルや、砲台の足元にタイヤらしき木の輪が付けられていることから、昔戦略ゲーでみたスコーピオンと呼ばれるタイプに酷似している。
野暮ったい前面の壁部分が無い事から、機動性や組み立ての速さを優先しているものと思われる。
観客席から声が上がる。
「なんだあれは?」
「でっかい弓、か?」
「それにしたってあんなの届くのか? どう見たって弓の届く距離じゃねえぞ」
そう、彼らがいる場所は本来弓では届かないフィールドの端であった。
互いの弓兵の距離は、サッカー場のフィールド両端と言えばわかりやすいだろう。
そんな距離を弓が狙えるとは到底思えないのだ。
どんなに腕の良い弓兵でもせいぜい半分が精いっぱいだ。
大鷲騎士団の弓兵も、最初は見た事のない兵器に驚愕していたがそれが届かないとわかると冷静に前線で戦うルーファスらを狙い続けた。
すると、乱戦中のルーファスが叫ぶ。
「散開! 弓兵を狙え!」
突如、彼らは敵を引きつけることを辞め、城塞盾を手放し素早く敵陣を駆け抜け始めた。
元々盾という大きな武具が彼らの動きを阻害していたが、それらを手ばあんなした事でその動きは疾風の如く、鎧を見に纏っていることを忘れさせる速さだった。
それを逃がすまいと前衛で戦っていた大鷲騎士団剣士が追いかけるが、トレント製の鎧で身軽な黒翼騎士団と、全身金属のフルプレートを着用している大鷲騎士団ではどうしても素早さに差が出てしまった。
次にミリアリア達にも動きがあった。
弓兵たちが組み立てたバリスタを押して前進を始めた。
木で出来た小型な車輪が音を立てて前へ進む。
速度は人の小走り程度ではあるが、鎧の重さによって遅れが出ている大鷲騎士団を射程に捉えるまでそう時間はかからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!