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~ローガン視点~
「どういうことかな」
「も、申し訳ございません」
僕は今、専属商人であるトルティオを呼びつけている。
余計な人物が紛れる事の無いように、シュミット家の専用スペースでだ。
彼は真っ青な顔で現れたと思うと、ひたすら低頭平身して詫び続けた。
どうやら呼びつけた理由もすぐわかったようだ。
「アレは誰の発案かな?」
「そ、それは黒翼騎士団におりますミリアリアと言う少女でございます」
……ああ、ニーナが助けたという孤児の子か。
恐らく以前から普及している投射砲と言う武器を元に改良したのだろう。
それであれば、アレの危険性に気付けなかったのもある程度理解できるな。
「だが、お前ほどの人間があの武器の危険性を理解できなかったわけでないだろう」
責めるように言うと、彼は少しばかり目を泳がせた。
「言え」
体から魔力をみなぎらせ、脅しつける。
魔力に適性のある者であれば何のこともない波動だが、一般人であるトルティオには巨大な魔物に睨まれたような威圧感に感じているだろう。
「ロンベル子爵、でございます」
「なに」
声に思わず険が乗る。
するとさらに委縮するトルティオは、裏で何があったか洗いざらい話した。
ミリアリアがいくらニーナ付き護衛であっても、それ以上ではない彼女がトルティオに武具の制作依頼をするの理由にはならない。
鎧を一新するにあたって多少の面識もあったが、対応の殆どは団長であるルーファスが行っていた為、それまで直接会話することもなかったそうだ。
しかし。どこからかミリアリアが武具の作成について思案していた事を聞きつけたあの男は、巧妙に近づき親切そうな態度でトルティオを紹介したそうだ。
考えたくはないが、例の誘拐事件の時からミリアリアが目を付けられた可能性がある。
それで周囲を嗅ぎまわられ、その事を知ったのかもしれない。
「それで、何故その紹介を受けた」
「子爵様は、少し前より当商会で多額の購入などをしてくれる上客の一人でして……」
なるほど、ニーナの事を探る過程でトルティオの事を知ったか。それで間接的にも縁を持つ為に近づいたようだ。
そしてトルティオも一商人として対応をしていた為、上客であるロンベル子爵の誘いを断り切れなかったようだ。
腹立たしいほどまでに周到な男だ。だが奴はニーナを下種な目で見た、唾棄すべき男だ。
到底近づく事を許すわけにはいかない。
すると彼はなぜそれほどロンベル子爵を毛嫌いするのかと聞いてきた。
「確かにロンベル子爵の態度は少々非常に良くない物ですが、それだけで――」
といった質問を投げかけて来た。
なるほど、彼は知らないのか。
「奴は、過去ニーナを攫った男と裏で繋がっていた疑いがある」
「なっ!?」
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