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~ローガン視点②~
そこから僕は、王都に来る道中奴に会った事、その際にニーナを意図的に催淫効果のある香に満たされた馬車に招待するなどしていた事も教える。
今大会でも何やら不穏な動きをしている噂を聞いており、奴には警戒していた。
また、商会にも不正な香を持ち込み既成事実を作ろうとした節もあると告げると、トルティオは顔真っ赤にして怒り狂った。
「それほどの事を、……くっ、ローガン様申し訳ございません。このトルティオ・バスティカス一生の不覚でございます……この目をもってしてもあの男の真意を覗けぬとは……どうぞ、私をいかようにもお裁きください」
そう言って深く頭を下げた。
僕は彼の真摯な態度に、先ほどまで燃え上がっていた怒りをゆっくりと鎮静化させていく。
「いや、君ほどの男が奴の心理を覗けなかったのだ。奴が一枚上手だったという事だ」
「しかし」
自らの犯した罪を自覚する彼は、何の咎もなく終わるのを良しとしないようだ。
「代わりに頼みたいことがある」
「なんなりと!」
彼は前のめりで話を聞いた。
頼み問うのは大きく分けて二つ。
ロンベル子爵とその傀儡への接触のすべてを絶つ事。
今回の騒動の兵器、それの設計図の封印である。
その事を告げると彼は悩むことなく答えた。
「勿論でございます。職人には契約魔法使いを派遣してでも順守させます。当然私も」
「ああ」
「しかし……お嬢様にどんな顔をして合えばよいのやら……」
トルティオは自らの行った軽率な行動に頭を抱えた。
なんせ、幼いその身体を性の対象として大人から見られるというのは、非常に不愉快であるとアーリアやメアリーと言った女性陣から聞かされている。
そんな男の、僅かでも手が入った武器など触りたくもない筈だ。
ソレの手助けをしてしまったとトルティオは頭を悩ませているのだ。
「それに関しては君の今後次第だ。ニーナの失った信頼をどのように取り戻すかは、今後の働き次第だよ」
そういうと、彼は肩を大きく落とした。
「わかりました、それを今回の一番の罰としましょう」
トルティオはそう言って再び頭を下げた。
それにしてもロンベル子爵か……。
「邪魔だな」
僕はふと、窓越しに晴れ渡る王都の空を見る。
美しく鮮やかな空に対し、窓ガラスに映る自身の顔がこれ以上なく怒りに歪んでいた。
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