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到着すると、既に席についている複数の貴族が視線を投げかけて来るが、三人とも気にした様子もなく席に向かう。
流石は貴族の子供……慣れているな、なんて考えているとソーヤ達は俺の手を引いて一番日の当たりの良い席へと案内する。
「さあ、こちらへ」
そのまま席へと座らされる。
すると三人は円卓を囲う様にして座る。
正面にソーヤ、右手にクライン、左手にキール。
同行していたアシュレイとアーリアがお茶の準備をする。
目の前に並べられる香り高い紅茶と、クッキーが数種類。
キャロは一歩引いた所で護衛として周囲に目を光らせている。
するとすでにテラスで待機していたソーヤ達の従者たちが動き出し、彼らも準備を手慣れた様子で済ませた。
「ソーヤの試合はどう?」
紅茶を一口飲んで聞いてみると、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
「上々だ、流石は父上が鍛えた騎士団だ。このまま進めばニーナの騎士団と決勝でぶつかるかも知れないな」
笑みを浮かべながら、嬉しそうに語るソーヤを見てクラインが面白くなさそうに眉を寄せる。
「俺の騎士団も参加できればよかったんだがな」
「し、仕方ないよ。ミスト家の騎士団は、その、魔法使いがメインの部隊だから、騎士団大会のルールとは合わないよ。仮に魔法無しに組んでも、本来の実力を発揮できないよ」
「分かっているのだが、こういう時は少しばかり剣を振るえないこの身を恨みたくなるな」
ああ、そういえばクラインは魔法は凄いけど体力がからっきしだってナタリーさんが言ってたなぁ。
お風呂で喋ってた時にそんなことを話していた気がする。
まあ、それでも魔法を使えるってだけでも十分凄いと思うけど。
俺は母様達と話した内容を思い出しながらクッキーを食べる。
おお、これうまいな。
なんだろう、少し甘酸っぱいけどベリー系じゃあないな。
なんだこれ?
それにもう一種類のクッキーは、甘さこそ控えめだがプレーンな感じがこれまた良い。
ザクザクとした触感に思わず手が進む。
ふと視線に気が付いて周りを見ると、三人がなにやら微笑ましい表情でこちらを見ていた。
「むぐ」
しまった、またやってしまった。
ちくしょう、なんでこの体は甘味の誘惑にこんなに弱いんだ。
「ニーナはおいしそうに食べるな。菓子職人もきっと本望だろう」
「今度我が領地で人気のシフォンを送ろう。メアリー夫人も確か甘味は好きだったはずだ」
「あ、なら僕も甘い蜜が取れるお花の種を送ります。お風呂に花を浮かべて入ると肌などの美容にも良いんですよ」
三人から褒められたりプレゼントを約束され、なんだか申し訳ないやら、恥ずかしいやらで顔が熱くなる思いだった。
その光景を周囲の貴族たちが、微笑ましい顔でこちらを見ているのが更に恥かしいばかりであった。
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