騎士団大会 二日目 前(八歳児編)

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 煉獄の魔兵団というのは、字面から受ける印象通りの炎魔法に特化した剣士少数魔道兵多数の混成部隊だった。  煉獄とは言っているが、一定周期で兵の魔法属性素養をチェックし、最も相性の良い属性を騎士団名に冠するのが習わしになっているとクラインが語る。  炎は煉獄、水は濁流、雷は雷光、風は旋風といった感じだ。  非常にわかりやすい。 「まあ、あまりある事ではないが珍しい属性に決まった時は名前の決定に苦労するんだ」  クラインが冗談めかしながら話す。  魔法の属性は、今でもすべてを解明されてるわけではなく、生まれや性格、更には血筋と言った多くの要素が絡んで初めて素質としてその身に宿るらしい。  だからあまりある事ではないが極稀に、マイナーな属性が集まる事があるらしい。  過去に数度程、希少魔法使いがミスト家に大量に志願したことで苦労したと語る。 「何の属性だったの?」 「えっと……記憶だと毒属性と鉄属性だったな」 「……本当に珍しい属性だな」  魔法に詳しくないソーヤが眉を寄せて首を傾げる。 「鉄はわかるけど……毒って何が基本なんだろう」 「……まて、鉄はわかるってなんだ?」  俺の呟きにクラインが反応する。 「え?」 「鉄属性魔法は今でも謎の多い魔法属性だぞ。それをわかるって……」 「だって、鉄属性は土属性とかの派生でしょ?」  ポロッと答えるとクラインが目を見開いた。  なに、変なこと言った?  俺が首を傾げていると、フリーズしてしまったクラインの代わりにキールが教えてくれた。 「ええと、ニーナ姉さま、魔法の属性が派生するなんて論文、今まで出たことないです」 「え、そうなの?」  キールはコクリと頷いて答える。  視線を動かすとクラインも再起動したようで何度もうなずいている 「い、いったいどこで属性の派生なんて発想に至ったんだ。その様子だと派生条件なども知っているのか?」 「あ~……」  前世のソシャゲ経験です……とは言えない。  派生条件もあらかた把握しているが、人がたくさんいる場所で喋って平気なのだろうか?  三人の反応を見るからに、コレかなりの機密っぽい。  実際先ほどまで朗らかに喋っていた婦人たちが静かになっており、耳を傾けているのが何となくわかる。  ちなみにソシャゲ『悠久の翼』は、火・水・土・風・光・闇の六種類が基本属性として存在する。  特殊能力のある武具を装備したり、必要な属性魔法の熟練度を上げることで、さらに上の属性『派生属性』を取得することができるのだ。  雷光剣「ジュレームブリンガー」という武器を装備することで剣から雷撃が迸ったりした事も有る。  先ほど話題に上がった鉄属性も、土属性と火をある程度鍛えることで取得可能だった。  まあ、ゲーム内では低ランクの武器を生産するのに便利って程度だったので、プレイヤーからは『これ何のためにあるの』って言われ続けた不遇属性だが……。 「すまん、魔法に関する知識をそう晒すわけがないな……。しかしニーナは凄いな。もしニーナさえ良ければ今度話を聞かせてくれ」  俺が答えられずにいると、クラインが一人で納得してしまった。  ふと視線を周囲に巡らすと、聞き耳を立てていた貴族が慌てて目をそらした。  やはりここで話す内容じゃなかったようだ。  ちなみにアーリアとキャロの二人は俺を見て何やら顔を引きつらせていた。  ……不用意にしゃべり過ぎたようだ。
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