1598人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、おいしいお菓子と紅茶を飲みながら雑談しているとアシュレイが戻ってきた。
「滞りなく、あちらの領主は騎士団名を変える事に同意を頂きました」
とすごく良い笑顔で告げられた。
……なんか不安になるけど大丈夫?
すると彼は新しいトーナメント表を差し出して来た。
……なんだこれ、紳士騎士団? なんだこりゃ。
「そちらは元黒牙騎士団と名乗っていた騎士団ですね。ちなみに黒刃騎士団のほうは聖刃騎士団に戻したそうです」
「なぜ紳士?」
「おそらくお嬢様に対する謝罪を込めているのかと」
アシュレイは彼らが名前を騙った理由を調べてくれたようだ。
なんでも、あの二つの騎士団の領主は改革派の貴族らしく、名前を模して文句を言われないようならば、そのままで行くつもりだったそうだ。
もしかしたら、そのうち名前までそっくりそのまま真似られて、悪評まで流されそうな雰囲気すらある。
ちなみに、どうやって認めさせたかを聞いても、アシュレイはにっこりと笑みを浮かべるばかりで答えてはくれなかったが。
ただ、周囲警戒をしながら話を聞いていたキャロが小さく「アシュレイに目を付けられるとか、同情するっす」と、小さく呟いたのが耳に届いた。
俺の胡乱気な態度に気付いたアシュレイが少し眉を寄せる。
「いかがなさいました? まだご不満があるようならもう少し痛め――交渉してきますが」
「いえ、その必要は……まって、今なんて言ったの?」
「なんでもございません」
「本当に? 野蛮なことしてない?」
「ええ、それはもう『紳士的』に対応させて頂きました。あちらも非常に『友好的』にして頂いたので、ええ」
やばい、ミミに比べてアシュレイはまともな良い子だと思ったのだが、まさかのヤンデレ枠か。
表ではニコニコ、裏では主を罵倒した奴をぶっ飛ばす系男子。
だめだぞ、そういうのは禍根を残す恐れがあるぞ。
「あの、お願いだから優しくしてね? 無理やりとか、痛いのはダメだからね? 血が出ちゃうのはダメだからね?」
俺がそうお願いすると、なぜか静かに紅茶を飲んでいたソーヤ達が吹き出してむせた。
キャロは思わず笑いそうになるのを堪え、アーリアは何やら呆れた様子でこっちを見ている。
ソーヤ達の従者は慌てて片づけるのだが、何やら男子連中の顔赤い。
アシュレイなんか顔を逸らし、眼を見てくれなかった。
なんでや。
最初のコメントを投稿しよう!