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その後、なぜみんなが赤面したのかイマイチ理解できなかった俺がアーリアに聞いてみたのだが『本当にお分かりにならないのですか?』と、若干信じられない者を見るかのような目で見られてしまった。
「お嬢様ピュア過ぎっす」
そんな言葉を聞いてやっと、俺は何やら失礼をしてしまった事だけはわかったので、彼らに素直に謝る。
すると男の子チームが慌てながら気にしてないから、もうその話はしないでくれと頼まれてしまった。
……非常に納得いかないが、俺のせいで場が白けてしまうのは避けたかったので、それ以上の追及はしない事にした。
ただアーリアが耳元で『今度、アビゲイルにその辺りお勉強しましょうね』と囁かれてしまった。
勉強、嫌でござる。
「次は私たちの騎士団の試合なので、準備に向かおうと思います」
気まずい空気を誤魔化すために言葉遣いを意識しつつ、俺がそう告げると彼らは頷いて答える。
「そ、そうですね! ニーナ姉さまは騎士たちの応援も、ありますよね!」
「治癒術師なのだから、それこそ試合終了までここに居てもいいと思うのだが……」
「彼女は責任感が強いのだ。騎士達が戦いに挑むのに自分だけ別席で眺めるというのは、矜持にも反するのだろう」
なにやらソーヤの中で俺の株が勝手に上がっているが、本音は騎士のかっこいい戦いをスクリーンなんかではなく、生で見たいと言うのが一番にあるのだ。
当然、彼らの怪我などにすぐ対応する治癒術師としての仕事もあるのだが。
「ではアーリア、キャロ、アシュレイ行きましょう」
先ほどまでの砕けた口調をやめて、ちゃんとした上位貴族としての礼をして席を立つ。
少し前までの子供らしい態度は既にない。
今は同じ大会で戦うライバルなのだから、相応の態度で挑むべきだと思った。
あちらもそれを察したのか、表情を引き締めまっすぐこちらを見つめ返して来た。
「ではソーヤ、次は決勝で会いましょう」
「うむ、楽しみにしているぞ。ニーナ」
それぞれ挨拶をして、俺はテラスを後にした。
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