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「でも、貴方には婚約者が……」
「あんな女、好きでも何でもない。お前をもう愛してしまった……自分の気持ちを抑える事なんて出来ない」
私の準備はもう終わってしまったのの、中の2人は自分だけの世界で愛を囁きあっている。
これから起こる事を考えると、その顔がどのような苦痛に歪むのか、直で見られないのが残念で仕方がない。
好きになったら止められない?
そんなの自分の行動を正当化したいだけでしょう?
自分達の為だけの行い。
抑えられないのは恋慕ではなく、ただの性欲ではなくて?
私はマッチに火を付けた。
それをばらまいた液体の上に、放り投げる。
途端に広がり、燃え上がる炎。
私はその様を口角を上げて眺めた。
「……? 何だか、この教室熱くないか? それに、この臭いは…」
十分に燃え広がったところで、王太子は異変に気付いた。
今頃気付いたところでもう遅い。
「? ……私も凄い嬉しくて、ドキドキして体が熱いです。ふふ、緊張してたからかな? 断られるんじゃないかって、思ってましたから」
王太子の言葉に何を勘違いしたのか、甘えるようなあの女の声が聞こえる。
あの女はまだ気付いていないらしい。
あの女の頭には、綿菓子がつまっているのかもしれない。
今現在、自分は命の危機に晒されているというのに。
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