4話

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周囲の喧騒を消し去るような金きり声。 初めて会った時の可愛らしい少女の面影は微塵も残っていない。 髪はボサボサで、目は血走っている。 顔や首には目立つ引っ掻き傷が、多く見られた。 手には刃の大きいナイフを握り、真っ直ぐ私の元へと走ってくる。 「まぁ……やっとですのね」 あの女だ。 あの女がやっと、私の元へとやって来た。 私はこの時をずっと待っていた。 私は極上の笑みを浮かべた。 「させるかっ!」 王太子が側にいた騎士の腰から剣を抜くと、私にナイフが届く前に女を切り捨てる。 かつての私と全く同じように、地に伏す女。 それでもなお、顔を私へと向けて憎悪を吐き出し続ける。 「お前が、お前のせいで、死ね! 死ねっ! 死ねェッッッ!!! これで終わると思うなっ! 何度でも何度でもやってやるっ!!」 あの女もようやく分かったようだ。 憎悪でも怒りでもない。 大した理由があるわけでもない。 それなのに与えられる暴力、苦痛、絶望。 そんなのものに甘んじ続けるのは、耐えられないでしょう? 私は何度も何度も女に教えた。 何をしようが、逃げられないと。 心が壊れてもなお、追い詰めた。 それが、この結果だ。 女は形振りかまわず、私を殺しに来た。 私がやったのと、同じように。
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