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「”ろっ──“」
「黙れ、屑が。姉上の姿をお前ごときがその薄汚い目に写しているだけで、吐き気がする。次などあるわけがないだろう」
弟が王太子が持っていた剣を奪い取ると、女が呪文を唱え終わる前にその首を落とした。
ピクリとも動かなくなる女。
「大丈夫ですか姉上っ!? 全く警備は何をしているんだ、このような不審者を学園に入れるなど」
前の世界ではあんなにあの女を愛していたのに、今は視界に入れる事すらしない弟。
「お前が無事で良かった……おい、早くそれを片付けろ」
私の肩を抱き、周囲の騎士達に指示を出す王太子。
「何だったんですかね、あの女……まさか、殿下の婚約者に手を出すなどと……貴女が人に恨まれるような事をする筈がないですし、きっと殿下に懸想した者の犯行では? それにしても……貴女が無事で本当に良かったです」
貴女はこの国に無くてはならない人ですから、と私を労る友人達。
かつてとは、大違いだ。
「えぇ、皆様、私をお助け頂きありがとうございます」
あの女は本当に死んだ。
これでこの世界はもう覆らない。
本音を言えばもう少し遊んでもよかったが、別にもういいだろう。
だって、私はようやく望んだ結末を手に入れる事が出来たのだから。
ありがとう。
貴方のお陰で、私大切な事に気付けたの。
「皆様のような方々が側に居てくださって、私本当に幸せ者ですわ!」
この脆くも美しい世界を守る為ならば、手段を選らんではいけないって。
本当に大切なものならば、持てる力を全てを使って守らなければね。
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