2話

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「あの女……宜しいのですか? 殿下は貴女の……」 あの女がホールに入った事で、周囲が殺気だつ。 入学して一ヶ月で、よくもここまで嫌われたものだと感服する。 私は友人に微笑むだけで、何も言わなかった。 今日、私は友人と共にいる。 それはつまり王太子が、私のエスコートをしていないということ。 王太子は今日、私ではなくあの女をエスコートしている。 あの女と目が合った。 あの女は王太子と侍らせている男達を連れて、真っ直ぐ私の元へやってきた。 「ごきげんよう? 殿方をそんなに侍らせて…今日も、下品ではしたない人ね?」 確か、最初の私はこんな事を言った筈だ。 もう記憶が定かではないけれど、私は極力同じように話しかけた。 「酷い、そんな事を言うなんてっ……謝ってくださいっ!!」 目に涙を溜めてあの女が、私に吠えかかる。 この後の流れはこうだ。 私が無礼者と言って、持っていたグラスの中身をふりかける。 あの時は、中身は透明ではなく瑞々しい赤色だったけれど。
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