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「約束、ですか……?」
僕が兄の言葉にそう答えると、兄は軽く頷き、先程から僕が気になっていた風呂敷の中から一通の手紙を取り出した。
「これをアイツに届けてほしい。」
その手紙には兄の婚約者の名前が入っていた。
本当ならば来年に婚約をする筈だった女性の名前が。
「俺はさ、この手紙を届けたくても届けられないから。」
兄の放ったその言葉には少しだけ震えがあった。
泣きたくても泣けない状況の中で、兄は必死に涙をこらえているのだろうと、僕は思った。
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